羽田空港不時着 第2節


榎倉
.榎倉.

「それでは、天使・榎倉建夫、行きますか」

榎倉はそう言って走り出した。榎倉は超人的なスピードで走り去っていく。榎倉の全身を覆うその甲冑はただ身を守るためのものではない。強化外骨格として、榎倉に超人的な力を与えている。

ウルヴェルヌは榎倉が走り出したのを見て、自分も走り出した。榎倉よりも遅れて走り出したにもかかわらず、ウルヴェルヌは難なく榎倉に並走する。

その時、飛行機が爆発した。

オペレーター
.オペレーター.

「破片に気を付けてください!」

ふっ飛ばされた飛行機の破片が四方八方にまき散らされる。

しかし、ウルヴェルヌと榎倉は一切気にすることなく、連絡橋を突っ走った。

榎倉
.榎倉.

「橋に爆弾とか言うことはなかったようだな。落ちたらヤバかったぜ」

榎倉は軽口をたたきながら走り続けた。ウルヴェルヌは、黙って周囲を警戒しながら走り続けている。

榎倉
.榎倉.

「しかし、どれだけ警戒したって、仕方がないだろ。この時間でこれだけ見通しが良くちゃ、敵はすぐ見える。見えない敵は、遠距離から狙撃をしてくる。そうなりゃ、気を張ってても、見えやしないんだ」

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「それでもすべき用心と言うものだ」

ウルヴェルヌは淡々と反論した。少しでも生存率を上げるためには、その努力を惜しまなかった。

ウルヴェルヌは走りながら、装備のボックスの脇から、銃を取り出した。

榎倉
.榎倉.

「おい、拳銃で応戦するつもりか!」

榎倉は泣きごとを言った。遠くから聞こえる音を聞いていれば、現場では自動小銃が使われていることが分かる。そんな戦場に拳銃で乗り込むなんてことは、愚の骨頂だ。

榎倉
.榎倉.

「こんな状況だぞ。もっとデカい物があるだろ!」

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「これで十分だ」

榎倉
.榎倉.

「対人戦ならな!!」

榎倉が吠えたのをきっかけにしたかのように、前方の倉庫から大きな音がした

二人は足を止め、思わず顔を見合わせた。

前方の倉庫からは二柱のいるところはまだ距離がある。しかし、そこまで届くような爆音で何かが近づいて来る。

榎倉
.榎倉.

「おいおいおいおい、何がおいでなさるんだぁ?!」

榎倉は泣き言を言った

ウルヴェルヌの目は正面から爆走してくる物体を視認した。キャタピラ装甲の巨大な何かが近づいて来る。

オペレーター
.オペレーター.

「少々お待ちください。現在、映像を解析中です」

オペレーターが、少し焦ったように言った。

榎倉
.榎倉.

「見た感じじゃ~大型自動兵士って感じだな・・・」

榎倉は、そういってからウルヴェルヌの手の拳銃をチラチラと睨みつけた。

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「対大型兵器兵装としてはこれがある」

そう言って、ウルヴェルヌは肩に担いでいるパイルバンカーを揺らした。

榎倉
.榎倉.

「・・・近接兵器で大型自動兵器を狩るなんて、お前ぐらいしかできんわ」

榎倉は呆れかえったように言った。

榎倉
.榎倉.

「あーあ、せめて機関銃でも持ってくればよかったのになぁ~」

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「そう言うお前は何の武装も携行していないがな」

ウルヴェルヌは、タケハヤにぴしゃりと言った。タケハヤは文字通り目線を逸らして歌ってごまかそうとしていた。

榎倉
.榎倉.

「仕方ないだろ。色々事情があるんだから。俺だって素手でドンパチやるのは不安だ」

榎倉は口を尖らせたが、ウルヴェルヌは聞いていなかった。むしろ、近づいて来る大きな機械をにらみつけていた。

オペレーター
.オペレーター.

「確認、完了いたしました。あれは自衛隊の大型機械兵士です。警備計画によりますと、同型機が警備本部の設置されたの滑走路倉庫に3機配備されているようです。」

榎倉
.榎倉.

「あーぁ、それじゃ、あともう2基あれの相手をするってわけね」

榎倉は、ため息をつきながら言った。その後も、不平をブツブツと漏らしていたが、ウルヴェルヌは完全に無視していた。

そうこうしているうちにも、大型機械兵士は全身をガタガタ言わせながらこちらに突っ込んでくる。

榎倉
.榎倉.

「ハードウェアリミッターをソフトウェアで無理やり超えさせてるのか。どうにもひでぇ音がしまくってる原因はその辺りだな」

榎倉は、こちらにやってくる機械兵を見つめて言った。

オペレーターからは接近してくる機体の情報が伝えられる。

オペレーター
.オペレーター.

「自衛隊の大型機械兵士SV-43型。ガソリンエンジン型。走行方式はキャタピラ。AI搭載で、自動制御されています。装備部品はInternational Arms Standard適合武器を互換可能な仕様です。当該機体の武装は現在解析中です。」

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「俺が行く。お前は脇の連絡橋でサポートできる範囲で頼む」

しかし、ウルヴェルヌは落ち着いて榎倉に指示を出した。

さらに、背中のボックスの下面からグレネードをいくつか取り出した。

榎倉
.榎倉.

「了解だ。それじゃ、そいつは戦闘の邪魔だろうから預かっとくぜ」

榎倉はウルヴェルヌから装備品のボックスをひったくった。

榎倉
.榎倉.

「それと、そのグレネード。俺の体が動かなくなるような使い方をするんじゃねぇぞ。そうなったら、俺は混乱をおさめるどころの話じゃないからな」

榎倉の鎧のパワードスーツは精密機器だ。グレネードの使い方によっては不調をきたしかねない。

だから、榎倉は念を押してから、連絡誘導路と並走する道路の方に飛び移った。

しかし、ウルヴェルヌは知っていた。榎倉の装甲がプロトタイプとはいえ、そんなやわな作りではないことを。

ウルヴェルヌはそれを指摘しようとも思ったが、機械兵士が接近してくるためni そんな余裕もなかった。

この状況でもなお、ウルヴェルヌも榎倉も落ち着いていた。

ウルヴェルヌは右手に握った拳銃で機械兵士を狙った。

ウルヴェルヌは発砲した。拳銃とは思えないほどの爆音とともに、弾丸が吐き出される。

しかし、銃弾は機械兵の装甲に深めの傷をつけただけで、弾かれてしまった。

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「それもそうか」

あのサイズで、拳銃に負ける程度の装甲しか搭載していないわけがない。

機械兵士が突進してくる。倒れこそしないものの、体を左右に大きく揺らしている。

バランス制御が半ばエラー状態なのは明白だ。

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「リミッターを外したか、姿勢制御の領域を犠牲に暴走用に上書きされたかだな」

そこは、榎倉の見立て通りと見ていいだろう。

しかし、機械兵士の速力は冗談ではなく、そのままひき殺す勢いだ。

本当ならば、連絡誘導路を渡りきってしまいたかった。橋の上で巨大兵器に自爆でもされようものなら、海に落ちることになりかねない。

ウルヴェルヌは、機械兵の方を向いて構えた。

ウルヴェルヌの通信機から更に連絡が入った。

オペレーター
.オペレーター.

「敵機、主武装はガトリング2門と赤外線探知ミサイルだそうです」

ウルヴェルヌ
.ウルヴェルヌ.

「ガトリングの射線制御も赤外線か?」

オペレーター
.オペレーター.

「いえ、画像解析の模様です」

ウルヴェルヌは返事が終わるのを待たずに赤外線フレアグレネードを思い切り上空に投げつけた。

ウルヴェルヌの投擲は大型機械兵のミサイル発射に間に合った。

グレネードは上空で爆発する。ミサイルはその強烈な熱放射と閃光にウルヴェルヌを見失う。

そのまま、ミサイルは上空に向かって軌道を変え、そのまま上空で爆発した。

ウルヴェルヌは爆風に煽られながら走る。突っ立っていたら、爆走する機械兵士に引き殺される。

走りながら、袖口から鉄球を取り出し鉄球から伸びるワイヤーを確認する。

機械兵士はウルヴェルヌの脇をすり抜けて爆走する。

ウルヴェルヌは鉄球を機械兵士に向かって投げつける。

榎倉
.榎倉.

「サポート!」

榎倉の声がウルヴェルヌの通信機から響く。

機械兵士の目の前に槍が出現する。

機械兵士はそれをバキバキと音を立てながら突進し続ける。

槍に激突したせいで、機械兵士はわずかながらに減速する。

鉄球のワイヤーが機械兵士の一部に絡まりはじめる。

一瞬でも躊躇すれば、急激な加速によって脱臼しかねない。

ウルヴェルヌは地面を蹴って飛び上がった。

ワイヤーが絡まりきるころには、ウルヴェルヌの体は上空に飛び上がっていた。

ウルヴェルヌはワイヤーの巻取りで機械兵士に近づいていく。

榎倉
.榎倉.

「もう一丁!」

榎倉の声と同時に、ウルヴェルヌの真下から槍が出現する。

ウルヴェルヌは、槍の穂先を避けながら、槍を蹴りさらに加速する。

そして、機械兵士の上に組み付いた。

機械兵士は減速したとはいえ、爆走を続けている。

ウルヴェルヌはパイルバンカーをセットすると、思い切り機械兵士に打ち込む。

反動で機械から振り落とされそうになる。

機械兵士の体が大きく傾く。

それをこらえる。

姿勢制御が間に合わないうちに、更にもう一発打ち込む。

装甲に大きな穴が撃ち込まれる。

さらにもう一撃、同じ個所に打ち込む。

そこにピンを抜いたグレネードを放り込む。

ウルヴェルヌは機械兵士から飛び降りた。

ウルヴェルヌはゴロゴロと転がっていく。

暴走する機械兵士はそのまま爆発四散した。

ウルヴェルヌは爆風に煽られながら、更に転がっていた。

ウルヴェルヌは、転がり終えてから、すぐに立ち上がった。

少し頭はふらつくが、それもすぐに失せた。

破壊には成功した。ウルヴェルヌ自身もあまり大きなダメージを負ってはいない。

少しふらつきながらもウルヴェルヌはうなずいた。

問題は一つ解決した。この調子で一つずつ解決していけばいい。

それが、ウルヴェルヌの未来だった。